2025年9月20日土曜日

第10回 有給休暇、産休育休、社会保険の基礎知識 法改正への対応

 こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。

さて、今回のテーマは「有給休暇、産休育休、社会保険の基礎知識 法改正への対応」です。

飲食店経営者の皆様にとって、人材確保と定着は喫緊の課題です。そのために、スタッフが安心して働ける環境を整えることは欠かせません。労働基準法をはじめとする各種法令は頻繁に改正され、常に最新の知識を持つ必要があります。今回は、特に重要な有給休暇、産休育休、そして社会保険の基礎と、最近の法改正への対応について解説します。


有給休暇の管理

働き方改革関連法により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年に5日間の有給休暇を取得させることが義務化されました。これに違反すると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

飲食店ではシフト制を採用していることが多く、有給休暇の管理が煩雑になりがちです。しかし、法律で定められた義務を果たすことは、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。

  • ネクストアクション:

    • 従業員ごとに付与日数と取得状況を管理できる台帳を作成しましょう。

    • 半年に一度など定期的に、従業員に有給休暇の取得を促す声かけをしましょう。

産休・育休制度

産前産後休業や育児休業は、女性だけでなく男性も取得できる制度です。2022年10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、男性がより柔軟に育児休業を取得できるようになりました。

  • 産前産後休業: 産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間。

  • 育児休業: 原則として子が1歳に達するまで(特別な事情がある場合は1歳6か月または2歳まで延長可能)。

これらの制度は、法律で定められた従業員の権利です。制度を知らない、または制度があっても申請しづらい職場環境では、従業員の離職リスクを高めてしまいます。

  • ネクストアクション:

    • 制度の概要を就業規則に明記し、従業員に周知しましょう。

    • 妊娠や出産を控えた従業員には、個別に制度について説明する機会を設けましょう。

社会保険の適用拡大

社会保険の適用範囲が、短時間労働者にも拡大されています。2024年10月からは従業員数51人以上の事業所が対象となり、以下の要件を満たすパート・アルバイトも社会保険に加入することになります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上

  • 月額賃金が8.8万円以上

  • 学生ではない

  • 勤務期間が2ヶ月を超える見込み

これにより、これまで社会保険の加入対象でなかったスタッフも、保険料を負担する必要が出てきます。

  • ネクストアクション:

    • 従業員の労働時間や賃金を確認し、社会保険の加入対象となるスタッフを把握しましょう。

    • 対象となるスタッフには、給与から控除される保険料について事前に丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。


まとめ

法律は従業員を守るためのものです。そして、法律を遵守し、健全な職場環境を築くことは、結果的に従業員のモチベーションや定着率向上につながり、貴店の経営を安定させる重要な要素となります。

法令遵守は、単なる義務ではありません。貴店の信用を守り、未来を築くための重要なリスクマネジメントです。当社では、お客様の抱える様々なリスクを可視化する「リスクマップ作成」のお手伝いも行っております。ご興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

次回、第11回は「労働基準監督署の立ち入り検査対策 事前準備と対応方法」について解説します。


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2025年9月13日土曜日

第9回 外国人雇用Q&A 在留資格、労働条件、文化の違い

 

こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。

さて、飲食業界は慢性的な人手不足に直面しており、その解決策として外国人材の雇用を検討する経営者の方が増えています。しかし、「在留資格がよくわからない」「労働条件は日本人と同じでいいの?」「文化の違いでトラブルにならないか?」といった不安や疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、外国人雇用に関するよくある疑問について、Q&A形式でわかりやすく解説します。


Q1:外国人材を雇うには、どんな在留資格が必要ですか?

A:就労が認められている在留資格が必要です。

外国人を雇用する際に最も重要なのが「在留資格」です。これは、日本でどのような活動ができるかを定めたもので、種類によって就労の可否や職種が細かく定められています。

飲食店で働く外国人によく見られる在留資格には、以下のようなものがあります。

  • 特定技能1号:人手不足が深刻な特定産業分野で働くために設けられた在留資格で、外食業も含まれます。一定の技能試験に合格した即戦力人材です。

  • 身分系在留資格(永住者、日本人の配偶者など):日本人と同じように働くことができます。

  • 特定活動(ワーキングホリデーなど):特定の活動を目的としていますが、旅費を補うために働くことが許可されています。

採用時には、必ず在留カードを提示してもらい、「就労制限の有無」の欄を確認しましょう。また、在留期間が有効であるかどうかも忘れずにチェックしてください。


Q2:外国人従業員の労働条件は、日本人と同じで大丈夫?

A:はい、日本の労働基準法が適用されます。

外国人従業員も、労働時間、賃金、休日など、日本人従業員とまったく同じように日本の労働基準法が適用されます。最低賃金や残業代の支払いも当然必要です。

また、雇用契約書は、本人が内容をしっかり理解できるよう、母国語や簡単な日本語で作成することが望ましいでしょう。不明な点は、丁寧に説明して疑問を解消することが、信頼関係を築く第一歩となります。


Q3:文化や習慣の違いでトラブルにならないか心配です。

A:お互いの文化を尊重し、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

宗教上の理由で特定の食材が食べられない、挨拶や休憩時間の習慣が違うなど、文化の違いによる戸惑いは起こり得ます。

大切なのは、採用時に「お店のルール」や「日本の働き方」を丁寧に説明すること。そして、日頃から「何か困っていることはない?」と声をかけ、相談しやすい雰囲気を作ることです。外国人材の多様な視点は、お店に新しい風を吹き込んでくれるはずです。


外国人雇用は、リスクマネジメントの視点が不可欠です。

外国人雇用は、人手不足を解消する大きなチャンスですが、同時に在留資格の確認不足や文化の違いによるコミュニケーション不和など、様々なリスクも潜んでいます。

「外国人雇用に関するリスクをどう洗い出せばいいかわからない」とお悩みの経営者の方は、ぜひご相談ください。貴社のお店に潜むリスクを可視化する**「リスクマップ」**の作成から、具体的な対策まで、専門的な視点でお手伝いさせていただきます。


次回予告

次回、第10回のテーマは「有給休暇、産休育休、社会保険の基礎知識 法改正への対応」です。


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第18回 食中毒発生!緊急時の初動対応と風評被害対策

​ こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。 さて、飲食店経営において、どれだけ衛生管理を徹底していても「食中毒」のリスクをゼロにすることはできません。...