こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。
さて、2021年6月より、原則としてすべての食品関連事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。この義務化は、食の安全を守るための大きな一歩であり、すでに多くの飲食店経営者の皆様が対応を完了されていることと思います。
しかし、HACCPの導入・運用は「ゴール」ではありません。義務化をクリアした今、私たち飲食店経営者が考えるべきは、「HACCPを単なる義務で終わらせず、その先の徹底した衛生管理、そして顧客からの信頼を勝ち取る経営戦略にどう繋げるか」ということです。
今回は、HACCP義務化の「その先」を見据えた、ネクストアクションを想起しやすい衛生管理の徹底術についてお話しします。
1. 「記録」を「改善のデータ」に変える
HACCPの運用において、最も重要な要素の一つが記録です。温度管理のチェックや清掃の実施記録など、日々多くの記録を取っているはずです。
ネクストアクション:
記録の「見える化」: 記録用紙をファイリングして終わりにするのではなく、週次・月次でデータを集計し、「最も記録漏れが多い時間帯」「基準値外の温度が検出された回数が多い機器」などをグラフ化しましょう。
「なぜ?」を深掘り: 記録データから問題の傾向が見えたら、「なぜそのミスが起こるのか?」「その機器はなぜ調子が悪いのか?」と、原因を深掘りし、対策を講じます。記録は、衛生レベル向上のための貴重なデータであると意識を変えましょう。
2. 「マニュアル」を「誰もが実行できる仕組み」に昇華させる
HACCPに基づき作成されたマニュアルは、確かに重要です。しかし、忙しい現場で「マニュアル通りにやっているつもり」になっているスタッフはいませんか?
ネクストアクション:
現場での「リハーサル」重視: マニュアルを読み合わせるだけでなく、交替制のスタッフや新人スタッフに対し、「手を洗う手順」「交差汚染を防ぐ食材の保管方法」などを抜き打ちで実演してもらう機会を設けましょう。
チェック項目の簡素化: マニュアルを現場の動線に合わせ、チェックリストを「YES/NO」形式や「完了/未完了」で瞬時に判断できる形に簡素化し、現場の負担を減らす工夫をしましょう。
3. 「ハザード分析」を「リスクマップ」へと拡張する
HACCPのプロセスでは「ハザード分析」を行いますが、これは基本的に食品の製造工程内のリスク(生物的、化学的、物理的ハザード)に焦点を当てています。しかし、飲食店経営におけるリスクはそれだけではありません。
ネクストアクション:
「HACCPの枠外」のリスクを洗い出す: 食中毒や異物混入といったHACCPでカバーできるリスクに加え、「設備故障による営業停止」「従業員による情報漏洩」「自然災害による食材への被害」といったより広範な経営リスクを洗い出してみましょう。
リスクマップの作成: これらのリスクを「発生頻度」と「事業への影響度」の二軸でプロットし、「リスクマップ」を作成します。これにより、HACCPでは対応しきれない緊急度の高い経営課題が見えるようになります。
当社、有限会社金城企画では、まもなく創業50周年を迎える長年の経験に基づき、HACCPではカバーしきれない、より広範な飲食店経営におけるリスクマップ作成のお手伝いが可能です。徹底した衛生管理を、店舗のレジリエンス(回復力)向上に繋げたいとお考えの経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。
HACCP義務化を機に、真の衛生管理の徹底、そして「食の安全」を通じたブランド力の強化を目指しましょう。
【予告】次回 第18回 のテーマ
次回は「食中毒発生!緊急時の初動対応と風評被害対策」をテーマに、最悪の事態が発生した際の「初動のミス」を防ぎ、事業を継続させるための具体的な対策について掘り下げます。
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