2026年2月7日土曜日

第17回:HACCP義務化、その先の衛生管理徹底術 【2026年2月緊急改訂版】~「記録」を「経営の盾」に変えるために~

 はじめに:HACCPは「チェック」ではなく「防衛線」である

HACCPの完全義務化から数年が経過し、多くの現場で「チェックリストへの記入」は日常化しました。しかし、今月(2026年2月)に能登・富山・滋賀で相次いで発生した深刻なノロウイルス食中毒事件は、私たちに重い課題を突きつけています。

滋賀の事例では検食を行っていたにもかかわらず、死者2名、83名の発症という最悪の事態を防げませんでした。また、能登のすし店や、30年無事故だった富山の産婦人科でも食中毒が発生しています。

今、私たちが取り組むべきは「HACCPの形式的運用」ではなく、「経営を潰さないための実戦的衛生管理」です。


1. 【事例分析】なぜHACCP導入施設で事故が起きるのか?

今回の3事例から、HACCPの運用において「形骸化しやすいポイント」が見えてきました。

  • 「加熱後」の盲点(滋賀・能登の事例):いなり寿司や寿司ネタは、加熱・調理した後に「人の手」が直接触れます。HACCPで中心温度を記録していても、その後の「盛り付け・成形」という最終工程での二次汚染には、温度記録以上の厳格なルールが必要です。

  • 「非加熱食材」の殺菌工程(富山の事例): サラダのような無加熱食材は、殺菌剤の濃度管理や浸漬時間がわずかに不足しただけでリスクが残ります。「いつものように洗う」という曖昧さが、30年の信頼を崩す原因となります。

  • 「不顕性感染」という見えない敵: スタッフに自覚症状がなくても、ウイルスは厨房に入り込みます。HACCPの「健康チェック表」が、適当な「〇(マル)」の羅列になっていないでしょうか?


2. 「その先」の衛生管理:3つの実戦的アップグレード

事故を防ぐため、今のHACCPプランに以下の視点を加えてください。

① 「盛り付け」を最重要管理点(CCP)と再定義する

加熱工程がない、あるいは加熱後に出すメニューにおいて、盛り付け担当者の手指衛生は「中心温度」と同等の重要度を持ちます。

  • 実戦策: 盛り付け直前の「使い捨て手袋の交換」と、交換後の「消毒液の使用」を必須工程とし、それを相互に確認する文化を作ること。

② 「記録」を自社を守る「証拠」へ昇華させる

滋賀の事例のように大規模な事故になった際、経営者が問われるのは「やるべきことをやっていたか(善管注意義務)」です。

  • 実戦策: 単なるチェックだけでなく、調理器具(まな板・包丁)の殺菌時刻や、殺菌剤の濃度測定結果を記録に残してください。万が一の際、これが「自社の無過失」を証明する唯一の武器になります。

③ セントラルキッチンの「一括停止リスク」を分散する

滋賀の事例では1箇所の調理場が止まったことで、5つの施設への供給が断絶しました。

  • 実戦策: 複数店舗展開されている方は、特定の工程を分散させる、または代替の仕入れルートを事前に確保する「BCP(事業継続計画)」の視点をHACCPに組み込んでください。


飲食店リスクマネジメント・ラボからの提言

HACCPは、保健所のためにやるものではありません。「お客様の命」と「貴店の暖簾」を守るための設計図です。

今回の滋賀の事例のように、死者が発生する事態となれば、法的賠償額は数千万円から一億円を超える可能性があります。HACCPの運用レベルを一段階引き上げることは、そのまま経営の最大のリスクヘッジとなります。

「自社のHACCPプランが、今のノロウイルス流行に対応できているか不安だ」という方は、ぜひ当ラボの専門スタッフまでご相談ください。石川県内での発生事例を熟知したプロが、現場の再診断を実施いたします。

【リスクマネジメントの基礎を学ぶ】 今回は最新事例に基づいた「実戦的対策」を解説しましたが、HACCPの法的な位置づけや管理計画の作り方など、「基本の考え方」については、[第17回:HACCP義務化、その先の衛生管理徹底術(基礎編)]で詳しく解説しています。 「守り」を固めるために、今一度基本に立ち返ってみてください。

【緊急寄稿】石川・富山・滋賀で食中毒が連鎖。死者2名の衝撃を「他店のこと」で終わらせないために

2026年2月、私たちの地元・石川県能登町、そして富山、滋賀で、極めて深刻なノロウイルス食中毒が相次いで発生しました。

特に滋賀の事例では、83名が発症し、2名の方が亡くなるという、極めて痛ましい事態となっています。

これらの事故は、決して「運が悪かった」で済まされるものではありません。当ブログでこれまで発信してきた「経営を揺るがすリスク」が、今、現実となって牙を剥いているのです。

こんにちは。有限会社金城企画の荒瀧です。

今回は予定を変更し、相次ぐ事例を振り返りながら、当ラボが提唱してきたカリキュラムに沿って、皆様が今すぐ打つべき「防衛策」を再点検します。


1. 発生事例の概要:なぜ「30年無事故」の現場で起きたのか?

今回の事例に共通するのは、「これまで大丈夫だったから」という経験則が通用しなかった点です。

発生場所原因食材(疑い)被害・状況
石川:能登町の人気すし店サーモン、カニ等9名発症。今年度県内7件目
富山:産婦人科クリニックサラダ(生野菜)30年間無事故の施設で発生
滋賀:介護施設(5施設)いなり寿司、和え物83名発症・2名死亡の重大事故

特に注目すべきは、富山の事例です。30年間、プロとして現場を守ってきた場所でも「死角」は訪れます。滋賀の事例では、加熱後に人の手が触れる「いなり寿司」が原因と見られており、「工程のわずかな隙」が命取りになることを示しています。


2. 今こそ読み直すべき「経営の防波堤」バックナンバー

今回の事故を受けて、特に経営者の皆様に再読していただきたい記事を厳選しました。

① 「慣れ」と「過信」という最大のリスク

「うちは大丈夫」という思い込みが、安全装置を外してしまいます。

② 非加熱食材と「二次汚染」の恐怖

滋賀の事例では、加熱後の「詰め作業」での汚染が疑われています。

③ 万が一の「事後対応」は万全か

滋賀のように死者が発生した場合、経営は一気に崖っぷちに立たされます。


3. リスクマネジメントは「成長のための投資」です

今回の食中毒事例は、一つのミスが財務を破壊し(第27回予定:キャッシュフロー管理)、事業継続を困難にする(第31回予定:BCP)ことを冷徹に示しました。

「保険」は事故が起きた後の経済的損失を補填しますが、「リスクマネジメント」は事故そのものを防ぎ、起きた時の傷口を最小限に抑えます。


【重要】今すぐ実行すべき3つのネクストアクション

不安を感じるだけで終わらせず、今日、以下の行動を起こしてください。

  1. 現場の「手洗い・消毒」を店主自ら再確認

    「30年無事故」の過信を捨て、今日から1週間、店主が厨房に立ち、スタッフの手洗い工程を直接チェックしてください。

  2. 緊急連絡先のアップデート

    万が一の際、保健所・保険代理店・弁護士へ即座に連絡できる番号が、現場の全員に見える場所に掲示されていますか?

  3. 無料「リスク体制診断」への申し込み

    滋賀や能登の事例を見て、自店の備えに少しでも不安を感じた方は、当ラボまでご相談ください。全35回のプログラムに基づき、貴店の「安心設計図」をプロの目で緊急診断いたします。


第26回 監視カメラ・防犯システムの活用法 犯罪抑止と証拠保全

 こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。

さて、これまで本連載ではHACCPやノロウイルス対策、異物混入といった「衛生管理」や「品質管理」のリスクを中心に考えてきました。しかし、飲食店経営において忘れてはならないのが、店舗の資産や従業員、そしてお客様を守るための「物理的なセキュリティ対策」です。

今回は、監視カメラや防犯システムを単なる「防犯」の道具で終わらせないための、具体的な活用法についてお伝えします。

1. 「犯罪抑止」:隙を見せない店作り

防犯カメラの最大のメリットは、犯罪を未然に防ぐ「心理的抑止力」です。 不審者や、万引き・食い逃げなどを企てる人物は、必ずといっていいほど「カメラの有無」を確認します。

  • 入り口やレジ周辺への設置: 「見られている」という意識を植え付けることで、トラブルの芽を摘みます。

  • ステッカーの活用: カメラの設置と併せて「防犯カメラ作動中」の表示を適切に行うことも、コストを抑えつつ高い抑止効果を発揮します。

2. 「証拠保全」:万が一の際に「真実」を守る

どれほど対策をしていても、トラブルをゼロにすることは困難です。食い逃げ、レジ金不正、あるいはお客様同士のトラブルが発生した際、防犯カメラは「客観的な証拠」となります。

  • 映像の鮮明さ: 最近のネットワークカメラは高画質化が進んでいます。犯人の顔や手元の動きがはっきり映る機種を選ぶことが、警察への証拠提出時に大きな差となります。

  • クラウド保存の検討: 録画機本体を盗まれたり破壊されたりするリスクを考え、データをクラウド上に保存する仕組みも有効です。

3. 「飲食店ならでは」の活用法:オペレーション改善

監視カメラは、防犯以外にも経営の武器になります。

  • 混雑状況の把握: リアルタイムで店内の状況を確認し、スタッフの配置を最適化する。

  • 接客の振り返り: トラブルが発生した際のスタッフの対応を検証し、教育の教材として活用する。

このように、カメラを「守り」だけでなく「攻め」のツールとして捉え直すことが、店舗運営の質を向上させます。

あなたの店舗の「死角」を見つけていませんか?

「うちは大丈夫だろう」という思い込みが、最も大きなリスクです。 まずは一度、オーナー様ご自身の目で、店舗の入り口、レジ、バックヤードに「死角」がないかチェックしてみてください。

弊社、有限会社金城企画では、長年の経験に基づき、貴店の特性に合わせた「リスクマップ作成」のお手伝いをさせていただきます。どの場所にどのようなリスクが潜んでいるのか、プロの視点で可視化し、最適な対策をご提案いたします。


【金沢市、野々市市、白山市の飲食店様へ】 食中毒などの衛生リスクも、防犯リスクと同様に初動が命です。 金城企画では、ノロウイルス事故時の「超・緊急行動ガイド」を発行しております。事故後の初動対応から、賠償、休業リスクへの備えまで、地元の皆様を強力にサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

次回予告:第27回 次回は、いよいよ本シリーズの節目となります。「衛生・品質・情報セキュリティリスク対策のまとめ(第17回〜第26回のまとめ)」をお届けします。これまでの学びを総復習し、より強固な店舗経営の土台を作っていきましょう。

第17回:HACCP義務化、その先の衛生管理徹底術 【2026年2月緊急改訂版】~「記録」を「経営の盾」に変えるために~

  はじめに:HACCPは「チェック」ではなく「防衛線」である HACCPの完全義務化から数年が経過し、多くの現場で「チェックリストへの記入」は日常化しました。しかし、今月(2026年2月)に能登・富山・滋賀で相次いで発生した深刻なノロウイルス食中毒事件は、私たちに重い課題を突き...