こんにちは。有限会社金城企画 代表取締役の荒瀧です。当社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで多くの企業様とともに、リスクマネジメントの現場を支えてまいりました。
さて、前回はリスクマップを基に、リスクに対する「4つの戦略」についてお話ししました。どんなに優れた戦略も、現場で働く従業員が理解し、実践しなければ意味がありません。今回は、リスクマネジメントを組織に浸透させるための鍵となる「従業員教育」について解説します。
第4回 従業員を「リスクマネージャー」に育てる - 誰でもできるヒヤリハット共有とマニュアル作成
飲食店のリスクマネジメントは、特定の担当者だけが担うものではありません。調理場からホール、アルバイトスタッフに至るまで、すべての従業員が「自分もリスクマネージャーである」という意識を持つことが不可欠です。従業員一人ひとりが日々の業務の中でリスクに気づき、共有し、行動に移すことで、組織全体の安全性が格段に向上します。
従業員を巻き込むための2つのポイント
従業員教育と聞くと、堅苦しい研修を想像するかもしれません。しかし、効果的な教育は、もっとシンプルで実践的なものです。
「ヒヤリハット」を共有する文化を作る 「ヒヤリハット」とは、重大な事故には至らなかったものの、一歩間違えば事故になっていた出来事を指します。これを共有する文化を作ることで、事故の芽を摘むことができます。
報告のハードルを下げる: 従業員が「こんな些細なことで報告していいのかな?」と躊躇しないように、「どんなことでもいいから報告してほしい」と伝えましょう。報告用の簡単なシートや、共有ノートを用意するのも有効です。
報告者を褒める: ヒヤリハットを報告した従業員を褒め、その行動を高く評価しましょう。「報告してくれてありがとう。おかげで事故を防げたよ」という一言が、次につながります。
改善に活かす: 報告されたヒヤリハットに対し、具体的にどう改善したかを全員にフィードバックしましょう。「滑りやすい床に注意喚起のシールを貼りました」「期限切れ防止のため、食材の管理方法を見直しました」など、改善策が見えることで、従業員のモチベーションも高まります。
「生きたマニュアル」を全員で作る マニュアルは一度作ったら終わりではありません。現場の変化に合わせて更新され続ける「生きたマニュアル」であることが重要です。
マニュアルを共有ツールにする: 「こんな時どうすればいい?」という疑問が出た時に、マニュアルが答えを教えてくれる。全員がアクセスしやすい場所に置き、新しい知識や事例があればすぐに追記できるようにしましょう。
写真や動画を活用する: 文字だけのマニュアルは読まれにくいものです。調理手順や清掃方法など、写真や短い動画を盛り込むことで、誰もが直感的に理解できるようになります。
ネクストアクション:明日からできること
今日の終礼で「ヒヤリハット」を1つだけ共有してみることから始めてみましょう。全員が参加しやすい雰囲気を作り、「些細なことでもOK」であることを強調してください。
既存のマニュアルを一つ取り上げ、従業員と一緒に見直してみるのはいかがでしょうか。「この手順、もっと分かりやすくできないかな?」「この部分はもう古くなっているね」といった意見交換が、より良いマニュアル作りに繋がります。
次回は、万が一の事故が発生した場合の初期対応と、情報共有の重要性についてお話しします。